言葉にかすかなズレを感じるとき

「本当に聴く価値があるおしゃべりは少ない」

名作として名高い映画「ピアノレッスン」のなかでの象徴的なセリフです。

6歳でみずから言葉を話すのを辞めてしまった主人公の女性エイダは、自分の思いをピアノで表現していました。

やがてエイダは、ピアノを教えていた男性ベインズと恋におちるのですが・・・。

言葉が話せないエルダと、字が読めなくて筆談ができないベインズ。

エイダが奏でるピアノの旋律をベインズが心で聴く - それが二人のコミュニケーションでした。

言葉でごまかしが効かない分、思いをのせた音がストレートに響くのでしょうか。

二人は激しく惹かれあうのです。

 

映画ピアノレッスン

 

映画を観てて、ふと感じたことがあります。

普通に「言葉」で会話が出来るひと同士も、言葉だけでやりとりしているのではない、ということ。

ことばに乗せて伝わる「音」。

音のひびきや振動も合わせて、耳に入ってくるのではないでしょうか。

時おり、言葉とひびきが微妙にかみ合わないことがあります。

たとえば相手が「幸せ」と口では言ってても、腑に落ちないことはないでしょうか。

ひびきに違和感を感じたり、音にチカラがこもってなかったりすると。

顕在意識で言葉の意味を咀嚼していても、潜在意識の方は「音」をキャッチするのかもしれません。

言葉で出てきたものと、思いを奏でる音の違いに、ひそかに戸惑うのでしょうか。

私自身、自分で何かを発していても、しっくりこないことがあります。

言葉とひびきがズレてしまい、静かに不協和音を発しているのでしょうね。

 

人とのコミュニケーションで、言葉の使い方には気を配ってきたつもりです。

ただ、言葉どおりの音を響かせているのかどうか、あまり意識してこなかったのかもしれません。

これからはより自覚的に、耳を澄ましていければと思います。