【映画コラム】ギヴァー 記憶を注ぐ者

児童文学作家ロイス・ローリーの世界的ベストセラー「ザ・ギバー 記憶を伝える者」を、実写映画化した作品です。

ハリウッドのレジェンド2人が共演したにも関わらず、日本ではあまり話題にならなかったようで・・・私もDVD化されるまで知りませんでした。

争いを無くし、平和な社会を築きあげるため、維持するためにどうすればいいのか。
メリル・ストリープを長老とする人たちが創りあげたコミュニティが、その答えでした。

全ての苦痛が排除されたかのごとく、整えられた世界。
衣食住すべてが快適に整備されているどころか、気候さえも、人間にとって最も適した状態が常に保たれてます。

そもそも、なぜ人と人とは争いあうのか。
突き詰めていくと、人間には感情があるからなのでしょうか。

長老たちは住民たちに薬を投与し、感情を全て、その薬で抑制するようにしたのです。

よく効く薬が、身体のなかの正常な細胞まで壊していくように。
争いのタネとなる憎しみも生まれない代わりに、人を愛する気持ちも失われました。

 

しかし、です。
そのコミュニティにふさわしい人間だけで構成される社会では、代替可能で、標準化された人間しか存在しません。

いかなる争いも揉め事もない、平和な管理社会、それを永久に維持管理していくということは・・・。言い換えると、永久に何も変わらない世界であり、進化も可能性もありません。

ただただ平穏に無難に人生をまっとうすることだけが、望ましい生き方とされてしまったのであれば・・・

それは「生きている」ということになるのでしょうか?

この物語は近未来SFですが、スクリーンの向こう、現代を生きる私たちにも問いを投げかけてるように思います。

暗黙のうちに出来上がった社会通念。
規格化された望ましい生き方。
心の声に従って、そこから外れようとする人を、恐怖という薬で抑えつける

そんなメタファーをも、私は映画のなかで感じました。

そういう意味でも、一人ひとりの生き方に一石を投じるような作品でした。