【映画コラム】すずめの戸締まり

よく分からないまま、話がどんどん進んでいきました。

  • 地震に関する話だということ
  • 主人公のすずめが、幼い頃に母を亡くしたこと
  • 偶然出会った男女がともに 世界を守ろうとしていること
  • その二人が惹かれ合っていくこと

大まかなことだけは、理解できるのですが。

目の前に繰り広げられるこの映画「すずめの戸締まり」は、本当は何を表しているのか・・・
疑問符がぬぐえないまま、物語は終盤に差し掛かろうとしていました。

細部にまでこだわった美しい映像には見惚れてはいるものの、没入しきれないところがあったのです。
霧がかかったままの心もよう、それが、あるシーンで吹っ飛びました。

幼いころのすずめが、お母さんを探して泣く 回想シーンです。

これぞ泣かせるシチュエーション、そう言ってしまえばそうですが、ここで涙腺が崩壊しました。

泣いても 泣いても 止まらない
このシーンを境に、私のなかでなにかが雪崩を打ったのです。

目に見える世界の地下では、人々の様々な思いがドクロを巻いています。
決して表に出すべきではないもの、普段は厳重な戸締まりを怠りません。

それでも、時を経て溜まったマグマは、地下の奥底を揺るがせはじめます。

大地がひび割れし、押し込めたものが一挙に溢れ出そうとするのです。

そう、私たちはいつでも心を震わせています。
泣きたくなる気持ちを抱えています。

ただ、なんの理由もないのに、ただ泣くことには慣れていません。

マグマを外に出す手段として、涙だけでなく、怒りというのもありますが
怒りは世界を真っ黒に染め上げ、周りを本当に破壊してしまいます。

地下世界で小刻みに震えていた思い、比較的安全に開放するのは「涙」ではないでしょうか。

固く閉ざしたトビラから、とあるきっかけで光が差し込み、私は涙をながす。
ただただ泣きたかっただけの気持ち
「こういうところに感動して泣いた」
もっともらしい理由を探し、納得しようとします。

本当はそうじゃないのです。

私たちは泣きたいのです。
いつでも、心のトビラを開け放したいのです。

あふれ出た思いを見届けて、また心のとびらにカギをします。

語られることのない思い
市井に生きる一人ひとりがそっと戸締まりをし、カギをかけます。
よく分からない蠢きを、心の奥底で揺るがせ続けた作品でした。