アミストラはかく語りき 第52回目の映画は西川美和監督作の「永い言い訳」です。

 

7年前の主演作「おくりびと」で見事な納棺師役を演じた本木雅弘さんが、今度は自己チューでグタグダな小説家を演じきりました。

「これは素の自分に近い」とご本人はインタビューで答えてましたが。

「えーーっ、あんな人なん?」
いちファンとしては、軽くショックでした。

では、あらすじをどうぞ。(yahoo!映画 より)

 

人気小説家の津村啓こと衣笠幸夫(本木雅弘)の妻で美容院を経営している夏子(深津絵里)は、バスの事故によりこの世を去ってしまう。
しかし夫婦には愛情はなく、幸夫は悲しむことができない。
そんなある日、幸夫は夏子の親友で旅行中の事故で共に命を落としたゆき(堀内敬子)の夫・大宮陽一(竹原ピストル)に会う。
その後幸夫は、大宮の家に通い、幼い子供たちの面倒を見ることになる。

 

長年連れ添った妻・夏子をバス事故で亡くした主人公・幸夫。

有名作家であるがゆえ、お葬式の模様がTVで流れました。

喪主としてのスピーチのあと、涙をぬぐう幸夫。

しかし、それは仕草にしかすぎませんでした。

自宅にもどり、ひたすらネットでエゴサーチをする幸夫の姿があります。

ウソ泣きがバレていないかどうかを、確かめるためでした。

 

夏子は親友のゆきと一緒に旅行に出かけ、その道中のバス事故で二人とも亡くなりました。

竹原ピストルさん演じる大宮は、親友ゆきの夫です。

幸夫と対称的に、大宮は奥さんを喪った悲しみで涙が止まりません。

・・・そうであってほしいのですよね。

最愛の妻を亡くした夫が嘆く悲しむ姿から・・・夫婦の絆の深さが伝わってきますから。

逆に泣けない、悲しまない姿をみると、どうでしょうか。

そぐわない風景に、周りの方が戸惑ってしまいます。

幸夫は妻を亡くした心境を、どう捉えたらいいのか持て余していました。

けっして悲しくないわけではない。むしろ・・・でも、分からない。

自分でも、本当の思いに手が届かないのです。

 

今では何かともらい泣きする、号泣路線な私ですが。

自分の感情や感覚にフタをしていた、昔の私とダブるのかもしれません。

例えば、誰かの送別会で周りがワンワン泣くシーンを思い出します。

泣いてる女子が愛らしく見えるなかで、私一人、シラフでした。

お前の姿は白けるよと言われたこともあります。

しかし、何も感じていないわけではないのです。

何らかの思いはうごめいていても、それが分かりやすく表出されない。

善良ぶっていても、実は血が通っていない。

人として何かが欠けているのではないか・・・自分でも恐れていました。

大宮みたいに、ワーーっとと泣ける人が私も羨ましかったのです。

 

いろいろなきっかけを経て、感情や感覚が開放された今では、蛇口がすっかり緩くなりました。

涙を暗に求められる場面で泣けると、昔の自分がホッとします。

暗黙の了解のもとに、場面場面で求められる感情はありますが。

いつもいつも、自分の感情がうまくハマるわけではないのです。

 

妻をどれだけ愛してたか。

喪失感はどれほど深いのか

幸夫は、気づくタイミングがズレてばかりでした。

身近な人を喪ったとき すぐに涙に変わる人ばかりではない

自分の感情をうまく掬い上げられる人ばかりではない

そのことを、不器用な幸夫が体現してくれました。