アミストラはかく語りき 第19回目に取り上げる映画いは、唐沢寿明さん主演作「イン・ザヒーロー」です。

 

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仮面ライダーや◯◯レンジャーのシリーズには必ず、主役を演じる俳優の代わりに、変身後のアクションを務めるスーツアクターの存在が不可欠ですが。

映画やドラマの裏方に徹するスーツアクターにスポットライトを当てた作品です。

 

主役の唐沢さん自身、下積み時代には戦隊モノなどでスーツアクターとして活動していたと言います。まさにハマリ役とも言えるでしょう。

では、最初にあらすじを Yahoo!映画より

 

下落合ヒーローアクションクラブの社長にして、その道25年のスーツアクターである本城渉(唐沢寿明)。
数年ぶりにヒーロー番組の劇場版作品に出演した彼は、一ノ瀬リョウ(福士蒼汰)という人気若手俳優と出会う。
ヒーロー番組に敬意を払わないリョウと対立するも、ある出来事を契機に本城は彼と絆を育むように。
そんな中、日本で撮影中のハリウッド大作で、落下して炎にまみれながらノーカットで殺陣を繰り出すクライマックスに出演する予定だった俳優が、恐れをなして降板。
慌てたスタッフは、本城の評判を聞き付けて出演をオファーする。

 

夢を追いかけながらもくすぶっていた人物が、たとえ命と引き換えになっても、一世一代の夢に賭ける

まるで「ロッキー」を彷彿させる作品でとにかくベタでしたが、不覚にも? ラストは涙があふれました。

諦めなければ夢は叶う - コレが本作品のメインメッセージでしょう。

 

勘違いするな。俺は自分のためにやるんだ。
俺はスーツアクターだ。ブルースにはなれねえ。
でも、俺も誰かのヒーローになりてえんだ。俺がやらなきゃ誰も信じなくなるぜ。
アクションには夢があるってことがよ。

 

この言葉に、本作品のエッセンスが凝縮されていると思います。

 

ただ、私は ”夢を追いかける” ”夢を叶える” ことへの光と闇を、本作品から観た気がしました。

 

”夢”と一口に言っても、難易度はそれぞれに違います。

医者や弁護士のように、難関であっても資格さえとれば、とりあえずは実現するものもありますが。

俳優や歌手など芸能界で輝く”スター”への夢は、努力さえすればいつかは叶うとは限りません。

 

中には短期間でスターの座に昇り詰める人達もいますが、唐沢寿明さんご自身がそうであったように、長く不遇な時代を経験してから、ようやくスターダムに辿り着く人達も数多くいる世界です。

いや、どれだけ下積みを経験しても、最終的に夢が叶うなら、相当に恵まれた存在でしょう。

スタート地点さえ立てない人達が大半なのが、芸能界ではないでしょうか。

 

劇中に、こんなシーンがありました。

「もうこの仕事を辞めます」と言いに来たスーツアクター仲間を、唐沢寿明さん演じる本城渉は引き留めようとしましたが・・・こう言い返されてしまいます。

 

いつ、辞めるか、でしょう

 

あともう少し・・を積み重ねていく中で、気がつけば後戻りできる年齢では無くなってきます。

しかしながら、奇跡が起こる可能性が全くのゼロとは言い切れず、引き際を先延ばしにしてきたのでしょうか。

夢破れて去っていく仲間の背中を、ただ見送るだけの本城の無念が伝わってきました。

 

本作品のラストシーン。

本城は白装束を身にまとい、一世一代の夢を賭けて、ハリウッド映画の本番へと飛び出していきました。

一歩間違えれば命取りとなる苛酷なスタントをこなしながら、次々と襲ってくる敵と戦います。

ヒーローである本城は見事な立ち回りでなぎ倒し、そこら中で次々と敗れた者たちの山が出来上がっていくのですが。

 

Winner Takes All

その風景はまるで、一握りのスターが、夢半ばにして倒れた屍たちを踏み台にしていく姿のようでした。

 

道でカップルとすれ違った時に、『あの人どこかで見たことある。俳優さんじゃない?』って言われるくらいのレベルが、その時の最高の目標。
それくらい顔を出す役をもらってセリフをしゃべれるなんて、夢のまた夢だった。
イン・ザヒーロー インタビュー 映画.comより

 

押しも押されもしないスターとなった唐沢寿明さんが、スーツアクター時代を思い出して語ったインタビュー記事です。

運命の女神が微笑まなければ、彼とて”スターを夢見た男”で終わってたかもしれません。

そのせいでしょうか、彼の演技はいつも以上に鬼気迫るものでした。

実際に、長丁場ともなったアクションシーンの大半は、彼自らが演じたそうです。

 

兵どもが夢の跡

芸能界、スポーツ界、芸術の世界・・・華やかな世界に身を投じる人は多いのですが、成功と呼ばれる地位に立てるのはほんの僅かです。

栄光への架け橋を這い上がる過程で、夢からすべり落ちた人たちの死屍累々がどこまでも横たわっているのでしょう。

辛酸をなめた過去の自分、苦境を支えあった仲間たちを尻目に頂点に立ち、大いなる光と闇を背負える者こそが、スターと呼ばれる存在なのかもしれません。