アミストラはかく語りき 第42回目に取り上げるのは、ヒマラヤ・メルー中央峰ダイレクトルート登頂の様子に迫るドキュメンタリー映画「MERU/メルー」です。

昨年、富士登山を経験して(登頂は断念しましたが)、それ以来、山の魅力に目覚めた私です。

山ガールなウェアも一通り揃えたので、今年2017年は月に一度は山登りしようと目論んでおりますが。

本作品の中で何度も命の危険に晒されてながらも、前人未到に挑む男たちの勇姿に、ハイキング気分が粉々にぶっ飛びました。

解説はこちらです。(Yahoo映画より)

ナショナルジオグラフィックなどの写真を手掛けてきた山岳写真家で登山家ジミー・チンが、ヒマラヤ・メルー中央峰ダイレクトルート登頂の様子に迫るドキュメンタリー。
ジミー、コンラッド・アンカー、レナン・オズタークが、難関を極める山を目指す姿にカメラが密着する。
ジミーとエリザベス・チャイ・ヴァサルヘリィが監督を担当。克明に記録された困難な登山の過程や、険しくも美しく壮大な山の風景に言葉を失う。

 

本作品の撮影は、実際にMERU登頂に挑むメンバーの一人、ジミー・チンによるものです。

カメラが捉えるのは、足元に広がる90°の絶壁と、はるかかなたに見える谷底でした。

登頂の様子を捉えるというレベルではなく、今にも滑り落ちる絶壁をともに体験するかのごとくです。

「もーーー私なんて、こんなん無理無理無理」

高まる心拍数に耐えられず、誰も聞いてないのに首を横にふる私です(笑)

高度6,500m。高さだけでは、最高峰のエベレスト8,848 mに及ばないものの、難易度はエベレストの比ではないといいます。

ヒマラヤ・メルー中央峰ダイレクトルート、通称シャークスフィンは、30年もの間、多くの登山家が登頂を目指しつつも一人の成功者も出してませんでした。

登山家ジミー、コンラッド、レナン、三人のチームが2008年にも挑んだ際は、登頂まであと100mのところで、撤退を余儀なくされたのです。

下山直後は敗北感から、二度とメルーには挑まないと誓った三人でしたが、時が経つにつれ、再挑戦への渇望が高まります。

幾多の困難を超えて、2011年9月にこの3人は再度、シャークスフィンへ向かったのです。

 

エベレストで山は通常、シェルパが登山者の荷物を持ってくれると聞きますが。

ここMERUでは、登山者自身が100キロにもなる荷物を抱えながら、山肌をよじ登らなければいけません。

ただでさえ、重力によって地上に引き戻されるのに・・・荷物の重みがソレを加速させるでしょう。

命がけで断崖絶壁を這い上がっていくその姿に、私は人生を重ね合わせずにいられませんでした。

私たちもときに、断崖絶壁ともいえる困難に挑まなければいけないときがあります。

上からは、行く手を拒む吹雪が、挑戦をあざ笑うかのごとく吹き荒れ

下からは、現状維持や安泰へと引き戻す重力がささやきます。

「そこまでしなくてもいいんじゃない」
「このままでいいんじゃない」

例え頂上に達したとしても、そこに何があるのかが、たどり着いてみなければ分かりません。

それでも熱に浮かれたよう、人生の断崖をよじ登るときもあるのです。

そこに行けば確実に手に入る そんな確約がなかったとしても

たとえ途中で断念せざるえなくても

もう元の場所には戻れなかったとしても

ソレしか選ぶことができないのです。

 

さらに人生は、私たちに過酷な課題を手渡すこともあります。

ときに、生きるそのものが断崖絶壁にみえるかもしれません。

死闘の限り手を尽くしても、誰もが登りきれるとは限らないのです。

シャークスフィンは美しく、無慈悲な微笑みを浮かべたままでした。

それでも、あなたが断崖を登りつづけたこと

何度も滑りおちそうになりながらも、懸命に足場を探し、山肌を踏ん張ったこと

その歴史は消えることはありません。

生きていく人々の胸に、その勇姿、その命は刻まれていくでしょう。

 

三人のクライマーは死と隣接する場所で、生きる意味を刻み続けました。

「山に登らない人生なんて 僕には想像できない」

魂を揺さぶられたドキュメンタリーでした。