紙の月

 

アミストラはかく語りき 第24回目は宮沢りえさん主演の「紙の月」です。

角田光代さんの原作を読んだ上で観たのですが、大まかなストーリーは同じでも、登場人物や細かな部分が異なっていました。

では早速、あらすじをどうぞ (Yahoo!映画より)

 

バブルがはじけて間もない1994年、銀行の契約社員として働く平凡な主婦・梅澤梨花(宮沢りえ)は綿密な仕事への取り組みや周囲への気配りが好意的に評価され、上司や顧客から信頼されるようになる。一方、自分に関心のない夫との関係にむなしさを抱く中、年下の大学生・光太と出会い不倫関係に陥っていく。彼と逢瀬を重ねていくうちに金銭感覚がまひしてしまった梨花は、顧客の預金を使い始めてしまい……。

 

主人公の梨花は、不倫関係に陥った若い男性・光太の学費を援助するために、勤務先の銀行での横領行為に手を染めてしまいました。

それだけに留まらず、洋服やホテルのスィートルーム宿泊など、贅沢のために横領行為が止まらなくなったのです。

そんな梨花の姿は、滑稽にしかみえません。

自分とは対岸にいる人間の仕業だと、見做したくなるところですが・・・。

他人ごとで済ませられるほど人生は甘くないと、梨花は教えてくれました。

 

梨花は平凡にみえる自分の人生にさしたる不満があった訳ではないけれど、このままではいやだ、かすかな焦燥感があったのかもしれません。

彼女に思いを寄せる若い男性とたまたま出会い、開かれたドアに飛び乗ってしまったこと。

単なる不倫で終わるつもりが、その男性がたまたま借金を抱えていたこと。

デパートの化粧品売場で持ち合わせのお金が不足したときに、顧客から預かったお金を一時的に借用したこと。(この時はすぐに返金)

「使わないお金なんて、ちょっと借りてもお客さん意外と気づかないと思うんですよね」

大島優子さん演じる銀行の同僚が、梨花に囁きかけたこと。

 

劇中では、平凡な主婦で銀行の契約社員だった梨花が横領に至った経緯として、いくつかの小さな伏線が張られています。

さらに高校時代にも遡ります。

海外に住む子供たちに多くの募金を渡そうと、父親の財布から5万円を抜き去ったのです。

「人を救うためなら、どんな手段で得たお金でもいい」

その梨花の切実な気持ちは、学校のシスターには通じず、未消化な思いを抱えていました。

高校時代に梨花が救えなかった子どもと、若き男性が重なったのかもしれません。

 

一つ一つは、人生の中のよくある一コマです。

大半は、何の伏線にもならないまま、単なる思い出として消化していきます。

そういう経緯がある女性だから、犯罪を犯したと考えがちですが。

犯罪を犯したからこそ、これまでの人生の平凡な一コマが、伏線へと変貌してしまったのではないでしょうか。

 

世にいう「転落」や「犯罪」というと、一線を超えてしまう感じがしますが。

転落とは崖の下ではなく、いつも通るマンホールにたまたま穴が開いたようなものかもしれません。

そんな怖さを感じさせてくれた作品です。