アミストラはかく語りき 第46回目に取り上げるのは就職活動中の若者を描いた作品「何者」です。

佐藤健さん、菅田将暉さん、有村架純さんなど、今をときめく若手俳優の競演ということでも話題になりましたね。

本作品の脚本・監督は、三浦大輔さん。「恋の渦」「愛の渦」で描いた人間の本音っぷりに魅了された私は、本作品もワクワクで鑑賞に臨みました。

では、あらすじをどうぞ(yahoo映画より)

就職活動の情報交換のため集まった大学生の拓人(佐藤健)、光太郎(菅田将暉)、瑞月(有村架純)、理香(二階堂ふみ)、隆良(岡田将生)。
海外ボランティアの経験や業界の人脈などさまざまな手段を用いて、就活に臨んでいた。
自分が何者かを模索する彼らはそれぞれの思いや悩みをSNSで発信するが、いつしか互いに嫌悪感や苛立ちを覚えるようになる。
そしてついに内定を決めた人物が出てくると、抑えられていた嫉妬や本音が噴きだし……。

 

幸せ - もともとこの言葉や概念は、江戸時代以前は無かったと聞きます。

海外から輸入された「幸せ」の概念、またたく間に日本人のこころを掴んだのでしょうか。

幸せな人生をおくりたい - 誰もがもつ素朴な願いに、いつしか人としての勝ち負けの要素が入り込んだようです。

自分は幸せと思いたい。幸せだと人から思われたい。

喉元から手が出る願いから、SNSに充実したワタシをアピールするのでしょうか。

本作品に登場するのは、就活中の若者たちです。

そして、どの世代の人にもある欲望が見え隠れします。

「あなたたちより 私の方が上よ。」

舞台裏でほくそ笑むマウンティングが出ないよう、表面的には励まし合い、協力しあう彼ら。

ある人は理想を掲げ、就職という名で自分を売り渡す人たちを蔑み

ある人は意識の高さを掲げ、自分を積極的にアピールし

ある人は何者になろうとしてあがく人たちを、高みの見物で眺めています。

 

誰もが持っているものを 私も持ちたい

誰かが持っていないものを 私は持ちたい

それが内定であるのか 恋愛か友達の数なのか それぞれですが。

充実したワタシを自他ともに認めること

それでようやく自分が立っていられる感覚は、私にも身に覚えがあります。

私の大学時代は、クリスマスは恋人と過ごすのが定番の過ごし方でした。

今でいうクリぼっち、恋人がいないという理由だけで形見の狭い思いをしたのです。

誰も表立って言う友人はいないのですが、微妙な視線って感じるのですね。

友人同士、デートの話で盛り上がっているのに、自分は聞き役でしかなれないこと

唯一無二の異性としては、誰からも選ばれないということ

結婚し、子供を持つ母親になっても、忘れることは出来ません。

誰かにとっての「何者」にもなれない、あの頃感じた存在証明の危うさを。

本作品の場合は、その「誰か」が「就職先」に取って代わられたともいえるでしょうか。

 

「内定ってまるごと自分が肯定された感じ」

菅田将暉さん演じる光太郎のセリフが、胸に突き刺さりました。

 

自分をブランディングするなんて、かつては芸能人しか必要なかったでしょうが。

インターネットが普及し、日々が劇場化するなかで、一般のひとたちも「何者」かにならざるえないのでしょうか。

「こんなにたくさんのお客様に囲まれて、忙しくても充実するワタシ」は、至るところで目にします。

「何者かになるなんてアホらしい。どこまでも素の自分自身でありたい」

天衣無縫なメッセージを発することで、他者との差異をアピールする「何者」もいます。

目にうつる人達を冷めた目線で分析する主人公・拓人は、誰のなかにもいる「何者」かもしれません。