アミストラはかく語りき 第12回目に取り上げる映画は「ワンチャンス」です。

しがない携帯電話の販売員から、幼い頃からの夢だった歌手に転向したポール・ポッツの半生が描かれてました。

 

onechance

 

彼が世界的に有名になったきっかけは、イギリスで放映されているタレント発掘オーディション番組『ブリテンズ・ゴット・タレント

パッとしない外見のポールが、予選で見事な歌声を披露したのですが、その模様がYoutubeなどの動画サイトを通して、世界中に広がったのです。

結末は分かっていましたが、心温まる作品でした。

あらすじは以下の通りです。(映画.comより)

片田舎の恵まれない家庭に生まれ育ち、容姿も冴えず、内気な性格でいじめらればかりだったポール・ポッツ。
携帯電話ショップで働く彼には、オペラ歌手になるという密かな夢があった。
挫折を繰り返しながらも夢をあきらめないポールは、勇気を振り絞り、最後の望みをかけて人気オーディション番組「ブリテンズ・ゴット・タレント」に出場する。
地味な身なりで容姿もパッとしないポールに、会場の観客や審査員からも失笑がもれるが……

私が彼やスーザン・ボイルの存在を知ったのも、Youtubeです。

映画のあと、改めてポールの予選での動画を観ました。

ポール本人の姿と歌声に、涙がポロポロ出たのです。(映画でも、歌のシーンはポール本人による吹き替えでしたが)

彼の歌声、その真摯な響きが私の心を大きく揺さぶりました。

 

私どもファインネットワールドが、山崎啓支さんと大阪で共同開催した「NRTワークショップ」があります。

NRTの中では、私たちが生まれた時すでに兼ね備えていたものを「ピュリティ」と呼んでいます。

パッと見は冴えない彼が、オーディション会場にいる人々の心を鷲掴みにしたのは、ピュリティそのものだったからと私は思えました。

 

生まれ持って兼ね備えていたものの中に、もちろん「才能」があります。

彼が持つ才能は並外れた美しい歌声、音楽の才能に間違いありません。

しかし、ピュリティにはもう一つの側面があります。

本人の特質や気質という点です。

 

幼い頃からポールは内気で引込み思案。その上、あがり症で、長年人とコミュニケーションを上手にとることが出来ませんでした。

一般的にはネガティブと言われる要素ばかりで、成長過程の中で克服すべきとされる気質かもしれません。

しかし、彼は生まれ持った気質をほぼ残したまま、大人になっていきました。

 

何かにつけすぐに緊張し、夢にみたオーディション直前でさえ逃げ出そうとさえするポール。

繊細で敏感で、いつも心がふるえている彼だからこそ、彼の美声を通して、私たちの心を大いにふるわせてくれるのではないでしょうか。

 

映画の中盤で、彼が敬愛してやまないオペラ歌手パヴァロッティに歌声を披露する機会を得ました。

憧れの存在を前に緊張しすぎてうまく歌えないポールに対し、「君はオペラ歌手になれない」と酷評します。

「観客の心を盗む図太さがない。」

その一言は、歌うことへの自信を木っ端みじんに砕き、歌手になる夢を封印しようとさえしました。

 

パヴァロッティの言葉どおり、自分の気質を克服する形で「図太く観客の心を盗む」ことはできませんでしたが。

繊細で気弱な、本来の彼のまま、ピュリティのままで、世界中の人々の心に歌声を届けることができたのです。

 

生まれ持った気質を否定して、成長してゆく人は多くいます。

幼い頃はかなり内気だった私も、その一人と言えます。

(ついでに言うと、緊張しぃのあがり症なので、ポールの姿にはかなり親近感を感じました)

 

「ダイヤモンドになる原石の塊よ」

オーディション番組の審査員の一人、アマンダ・ホールデンはポールにそう告げました。

 

たとえ一般的にはネガティブに捉えられたとしても、本来生まれ持った気質こそが、磨けば光る原石ではないでしょうか。

そんなことを私に教えてくれた作品でした。