【コラム87】相談されるときはご注意を

「今日のセッションで扱いたいテーマは何ですか?」

もし、あなたがコーチからこの質問をされたら何と答えますか?

おそらくどうでもいいと思っていることは話さないでしょう(もちろん、アイスブレイクでの雑談は別です)

コーチに話すことは、きっとあなたにとって大切なことのはずです。

 

では、この大切なことの中で、あなたがコーチに話すのは、今、上手くいっていることでしょうか? それとも、上手くいってないと思っていることでしょうか?

 

コーチだけでなく、カウンセラーやコンサルタントといった「相談業」に携わったことがある方はよく分かると思いますが、大抵の場合は「問題」とクライアントが思っていること。

つまり、上手くいっていない、どうしたらいいかわからない、困っている、迷っている、気になっているといったこと。

特に、その問題を何とかしたいという思いが強ければ強いほど、俗に言う「重い」テーマになります。

 

コーチを始めた頃、この「重い」テーマがクライアントから出てくると、「なんとかしなくては」という思いがどんどん出てきました。

「クライアントをこの辛さや苦しみから救い出さねば」という変な責任感とプレッシャーを感じていたのです。

 

ですが、今はそれが完全に勘違いだったことが分かります。

 

確かにクライアントは、「上手くいっていないこと」「どうしたらいいかわからないこと」「困っていること」を話しています。

が、クライアントは決して「上手くいっていない人」でもなく、「どうしたらいいかわからない人」でもなく「困っている人」でもない。

本当は「上手くいっていること」「どうしたらいいかわかっていること」「困っていないこと」をたくさん持っている人だったのです。

むしろ「上手くいっていないこと」「どうしたらいいかわからないこと」「困っていること」は、日常のごく一部にしか過ぎない。

 

このことが腑に落ちてから、目の前のクライアントを「何とかしてあげないといけない人」から「困難に立ち向かい、課題に挑戦している人」と見ることができるようになりました。

 

コーチングに限らず、コンサルティングやカウンセリング、セラピーなど他者から相談を受ける仕事をしていると、相手の悩みや苦しみ、問題といったものにどっぷり浸かってしまい、アドバイスに走ったり、一緒に悩み過ぎてしまったりすることが多々起きます。

 

そうなってしまうことがいけないわけではありません。

ただ、そのとき、目の前の相手をどういう存在だと見て、関わっているでしょう?

 

力無き弱きものとして見ているか?

それとも、自ら答えを見つける力を持つ強きものとして見ているか?

 

どちらが良いか悪いかという善悪の話ではありません。

どちらを選ぶかという選択の問題です。

 

「あなたは目の前の人をどのような存在として見ますか?」