
【コラム88】学んだとおりにコーチングができないのはワケがある
「コーチングスクールではセッションが上手くいくのだけど、いざ職場でコーチングをしようと思っても、なかなか上手くできないんですよね・・・」。
コーチングスクールでコーチングを学んだ方からよく聞くことの一つです。
では、なぜ学んだことを日常で実践するのが難しいのでしょうか?
コーチングスクールでは、コーチングを学んだ者同士が練習し合う
コーチングセッションが上手くいくのは、コーチのコーチングスキルが高いからというよりも、クライアントが効果的なコーチングセッションの受け方を知っているかどうかにかかっているということは、実は、あまり知られていません。
スクールのトレーナーが、コーチングセッションのデモを前で見せることがあります。
そのとき、セミナーの受講生はコーチの質問や聴き方に注目しているようですが、同時にクライアント役の変化も意識せずに見ています。
子供は親の言うことではなく、親のすることを真似る。と言われますが、まさしく、コーチングセッションのデモを見ることで、クライアントとしてどういう風にコーチングを受けたらいいかという暗黙のルールのようなものを無意識に学び取っているのです。
ゆえに、コーチの質問が多少、的を得ていなかったとしても、クライアントが勝手に自分でセルフコーチングを始め、浮かんだ気づきを口にするので、コーチは自分のコーチングがうまくいっているように思うのです。まあ、下駄をはかせてもらっている感じでしょうか。(それがダメというわけではありません)
また、コーチングスクールで学ぼうという人たちは、コーチングに興味関心があり、学ぶ意欲も高いので、当然、積極的にコーチングを学びます。そういう参加者同士なので、コーチングセッションがうまくいきやすいのです。
一般の人は、コーチングの受け方がそもそもよく分かっていない
コーチングスクールで学んだことを日常の仕事の場面で誰かに使おうとするとき、その相手は、コーチングを学んだことがなかったり、コーチングをよく知らないという人が多いのではないでしょうか。
そういう相手に対して、コーチングスクールでやったときのようなコーチングをいきなりしても、相手は何を話せばいいのか、どのように話をすればいいのか困惑してしまいます。
そうなると、「コーチングってよくわからない」と距離を置かれてしまうこともあるでしょう。
「相手が必要とする答えは相手の中にある」というのは、コーチングの根本的な考え方で、まったくその通りなのですが、効果的にコーチングを使う方法を、コーチがチューターになって相手に教えてあげるほうが、相手もまた「よくわからないなぁ」と思うことが減り、安心して受けることができるのです。
では、何を教えてあげればいいのか?
コーチングの効果的な受け方を教えてあげればいいと書きましたが、では、「効果的な受け方」とは具体的にどのようなものでしょうか?
いくつかありますが、ここでは私がコーチングを初めて受けるという方や、学んだことがないというコーチング初心者に教えていることの中から一つ、ご紹介します。
【自らが考え、行動に移すことに焦点を当ててください】
コーチングを受けて効果を出すには、「上司(部下)がああだ、こうだ」「だんな(奥さん)が言うことを聞いてくれない」といった、誰か他の人のことを延々と語ったとしても、あなた自身は何も変わらないし、コーチングの効果は出ない。ということ。
そして、本当に変化するためには、自分自身がどうしたいのか、どうするのかを考えて、そこに焦点を当てる必要があること。
「過去と他人は変えられない」という言葉があるが、コーチングで成果を出すには、変えられる未来(これからの行動)と自分自身について扱うことがカギとなること。
まずは、これらのことを相手に伝えていきます。
すぐに、上手な受け方に変わるわけではない
とはいえ、変えることができる「これからの行動」や「自分自身」について、普段から考えている人ばかりではありません。
そういう人の場合、自分自身に向き合うことは、これまでやったことのない作業なので、慣れていないこともしばしばあります。
ですので、最初のうちは、コーチングセッションをしながらも、効果的なコーチングの受け方を何度も何度も繰り返し、伝えていきます。
コーチの中には、効果的なコーチングの受け方を相手に教えることを、「ティーチングしてはいけない」と、かたくなに拒絶する人がまれにいます。
ですが、コーチングという効果的な道具の使い方のポイントをただ相手に伝えるというだけなので、相手の意に反して無理やり教えているわけでもなんでもありません。
最初のうちに、このティーチングの時間を少しずつでも取っていくと、多少時間はかかりますが、あなたやあなたと一緒にコーチングスクールで学んだ仲間のように、徐々に効果的なコーチングの受け方が身についてくるようになります。
そうなると、お互いにコーチングの時間が有意義なものになり、成果も出やすくなるでしょう。