【コラム93】「コーチと話したいテーマが無いんです」と言われたら?

 

「特に今、コーチングで話したいテーマが無いんです」

 

コーチの方は、この「告白」、ドキッとしませんか?

3ヶ月、半年とコーチングを続けていると、

クライアントさんから一度や二度は、こういうセリフを聴いたことがあるかもしれません。

 

私もコーチを始めた頃は、

「そうなんですね、テーマが出てこないんですね」

と努めて冷静に答えてはいました。

 

が、頭の中では、

 

(テーマが無くなったら、もうコーチングは終わりなのかな……)

(それは、もうコーチングをやめたいということなのかな……)

(コーチングに興味が無くなったのかな……)

 

といった「妄想」が頭の中でワンワン鳴り響いていて、

 

(ヤバい、どうしよう、どうしよう)

(落ち着け、落ち着け、落ち着け)

 

と内心は、焦りまくっていました。

 

しかし、そうは言っても、セッション代を払ってもらっているわけですから、

「じゃあ、今日はやめましょうか」

という訳にはいきません。

 

なんとか手を変え品を変え、質問しながらコーチングセッションを続けるしかありません。

 

ところが、

 

「特に今、コーチングで話したいテーマが無いんです」

 

というところから、始まったにもかかわらず、

セッションが終わったときには、

 

「いやぁ、テーマが無いと思ってたけど、話しているうちに出てくるもんですね」

「今日は、本当に話したいことが話せたように思います」

 

といった声をクライアントから聞くことがあったのです。

それも一度や二度ではありませんでした。

 

(一体、これはどういうことなんだろう?)

 

最初は、何が起きているのかサッパリわからなかったのですが、

何度となく繰り返すうちに気づいたのです。

 

そう、

 

「本当のコーチングは、テーマが無くなってからがスタートする」

 

ということが。

 

コーチングセッションでクライアントが出してくるテーマは、

多くの場合、気になっていること、引っかかっていること、問題だと思っていること、です。

 

いわば、クライアント自身が自覚できていることになります。

それは、「最近、肩や腰が凝っているなぁ~」といった自覚している身体の痛みと似ています。

 

もともと気になっていた課題が解決、解消されていくと、

「最近、特に問題だと思うことってないんですよ」

という状態になるのは、ごく自然なことです。

 

なので、

 

「コーチと話したいテーマが無いんです」

 

そう言われたら、

 

「それは、よかったですね!」

 

と、クライアントと共に喜んでください。

 

本当のコーチングは、テーマが無くなってからスタートすると書きましたが、

身体で例えると、自覚していた痛みや症状が解消された状態であり、

症状を生み出した元となる要因を扱う段階に立ったといえます。

 

つまり、クライアント自身のより本質的なテーマを扱える準備ができたということです。

 

本質的なテーマとは、次のような問いとなって現れます。

  • あなたが心から願っている人生とは?
  • 人生をかけてもいいと思えるビジョンとは?
  • 何のために生まれて、何をして生きるのか?

 

忙しい毎日を送っていると、目の前のことをこなすのに精一杯になってしまって、

こういった本質的なテーマ、問いに答える余裕がなかなか湧いてきません。

 

しかし、だからといって、

いつまでも本質的なテーマと向かい合うことを避けていれば、

本当の人生を生きる、その鼓動を感じられないまま、人生を終えてしまいかねません。

 

「本当のコーチング、つまり、本質的なテーマを扱うコーチングは、今までのテーマが無くなったときに現れる」

 

一日も早く、あなたがクライアントさんから、

 

「特に今、コーチングで話したいテーマが無いんです」

 

と言われる日が来ることを願っています。