【コラム86】コーチングが大事になりすぎると……
「コーチングの良さを多くの人に知ってもらいたいけど、なかなかうまく伝わらないんです……」
そんな相談をコーチの方から受けることが多々あります。
コーチングの良さを広めたい。多くの人に知ってもらいたい。
でも、なかなか分かってもらえない。
そんなもどかしさが伝わってきます。
長年、このテーマの相談にのってきて分かったことが一つあります。
それは、
「コーチングが大事になりすぎると、逆に相手に伝わらない」
ということです。
こう言うと、
「えー、大事だと思わないと、相手に熱意が伝わらないじゃないですか?」
と思うかもしれません。
確かに、どうでもいいと思っていることを熱心に伝えたりはしないですよね。
本当においしいラーメン屋を見つけたら、会う人会う人に「あのラーメンうまいよ!」と伝えたこともありますし。
そうやって相手に熱く語れるときは、まだ大丈夫です。
暑苦しいと思われるかもしれませんが、その情熱は伝わります。
じゃあ、なぜ、コーチングが大事になりすぎると、相手に伝わらないのか?
例えば、100均ショップで買ったガラスのコップを落として割ったとします。
多くの方にとっては、「あーあ、割れてしまった。仕方ないなー」と、多少のショックはあっても寝込むほど大きくはないでしょう。
けれども、それがバカラやスワロフスキーといった高級なグラスだったとしたら、どうでしょう?
100均ショップで買ったコップと同じように、割れてもすぐにあきらめがつくかと言うと、そうではないかもしれません。
だから、高級なグラスは普段からとても大切に、慎重に扱うはずです。
コーチングが大事になりすぎるというのは、バカラかスワロフスキーといった高級グラスをとにかく落とさないように、少しの傷もつかないように慎重に慎重に扱うのと同じように、大事に大事に扱うということです。
そうなると人によっては、気軽に他の人に「コーチングいいよー 受けてみてよー」とは言えなくなるかもしれません。
コーチングを人に語ると、「えー、別にいいよ」とか「興味ないしー」という返事が返ってくることもありますし、「なにそれ、怪しいんじゃない」と辛らつな意見が返ってくることもあります。
そのたびに傷がつくわけです。とっても大切なあなたのコーチングというグラスに。
悲しいです。だから、安易に人に勧めることが難しくなってしまう。
特に、コーチングのおかげで人生が変わった。というような劇的な体験をした人であればあるほど、コーチングが大切な存在になってしまいます。その大切な存在が否定されたと思うと、悲しくなるでしょう。
そんな大切なものに傷がつく体験を何度も何度も繰り返すと、コーチングを人に伝えるということに憶病になってしまうのも無理ありません。
じゃあ、どうすればいいのか? コーチングを大事に扱わないようにすればいいのか?
いえ、それも難しいでしょう。
ただ、もしあなたの中でコーチングが大切になりすぎていたことに、まったく無自覚だったとしたら、そのことに気づくだけでも少しは気持ちが軽くなるかもしれません。
気持ちが軽くなれば、今までよりも人にコーチングの良さを気軽に伝えられるようになるでしょう。
あなたにとってコーチングが大切なものであるのは間違いないでしょう。
そして、それを否定する必要はありません。
ただ、忘れないでください。
あなたという存在は、コーチングよりもはるかに大きく偉大な存在だということを。
そして、あなたは本当は、他人からの無関心や否定的な意見に傷がつくような、やわな存在ではないということを。