枠組みをはるかに超えた天賦の才能

同じ道を切磋琢磨しあう中で、時折、最初からズバ抜けている存在が現れます。

普通なら経験を積み重ねて、その段階にまで達するのですが、まるでコツコツと重ねる努力をショートカットしたかのごとく、そこまで辿り着いてしまう人のことです。

なぜ一流になれたのかを自他ともに言語化できず、気がつけば出来てしまった。

そんな人に対して、この一言で片をつけます。

「天才」

さらに「天才」と一括りされる中でも、「神からの賜り物」としか思えないレベルの人もいます。

時は19世紀末。インドで生まれた著名数学者シュリニヴァーサ・アイヤンガー・ラマヌジャンがそのようです。

ラマヌジャンは「我々の百倍も頭がよい」という天才ではない。「なぜそんな公式を思い付いたのか見当がつかない」という天才なのである。

アインシュタインの特殊相対性理論は、アインシュタインがいなくとも、二年以内に誰かが発見しただろうと言われる

(中略)

数学では、大ていの場合、少し考えれば必然性も分かる。ところがラマヌジャンの公式群に限ると、その大半においては必然性が見えない。ということはとりもなおさず、ラマヌジャンがいなかったら、それらは百年近くたった今日でも発見されていない、ということである。

天才の栄光と挫折―数学者列伝 (文春文庫)

天才の栄光と挫折―数学者列伝 (文春文庫) 藤原正彦著

 

ここでいう「我々の百倍も頭がよい」というのは、普通の数学者ならかなりの時間がかかる数学の問題を、直観で瞬時に解き明かす能力かもしれません。

これも驚愕に値しますが、通常の数学者がもつ思考過程のレールを猛スピードで駆け巡ることを意味するのでしょう。

それに対してラマヌジャンは、全く別のレールから、公式を引っ張ってきたようです。

「なぜそんな公式を思い付くことが出来たのか」

彼が発見した公式は、100年近く経た今でも、誰にも思考過程を解き明かすことができないと言われています。

当時、本人ですら「夢の中で女神が教えてくれた」と答えたという逸話が残っています。

こうなると、私たちの理解の範疇をはるかに凌駕する「天才」ではないでしょうか。

頭の中に音楽が降りてきたと言うモーツァルトも、同じタイプかもしれません。

このように、我々の基準値から大幅にはみ出す才能を持って、この世に生まれてくる人がいます。

 

人間の枠組みをはるかに超えた存在がこの世にいる

その驚きに、私は「祝福」すら感じているのです。