言葉が伝えるものは一つではない

人は言葉を通して、複数のメッセージを同時に送ってくる-

最近、つくづくそう思います。もちろん、自分も人に対してですが。

面ではなく、立体で投げ込まれると言いましょうか。

例えば、です。

「あなたを信じてるよ」 という言葉をかけられたとしましょう。

額面通り、つまり1面だけで受け取れば、そのまんまですよね。

しかし、単純に1面だけを送ってくることは、ほとんどありません。

どういうメッセージを同時に送ってくるのかは、その時々ですが。

一例を挙げていくと、こんな感じでしょうか。

「信じてると言ったから、この通りにやってよね」

「信じてるって言ったら、あなたにエンパワー出来るよね」

時には、こんなメッセージもあるでしょう。

「一応、そう言っておけばいいか。」

などなど。

 

「あなたを信じてるよ」

「ありがとう」

一旦はそう受け答えしても、何か釈然としないときもあります。

往々にして、潜在的なところで別のメッセージを受け取っているのでしょう。

裏側のメッセージを明確に受け取ったとき、わたしたちはこう断罪しがちです。

「あの人、口ではこう言ってるけど、本当はそうは思っていない」

確かに、それも一面では真実です。

しかし、人間はゼロかヒャクで表せるほど、単純ではありません。

「あなたを信じてるよ」

どれだけ裏面が強かったとしても、その言葉も全くのウソではないでしょう。

あなたを信じてる - これも一面では真実の思いなのです。

相手から発する言葉に対して、つい、本当か/ウソか の二元的に判断しがちですが。

裏表を含めて、相手から伝わってくる全てのメッセージはたぶん全部本当なのですね。

 

作詞家の松本隆さんが番組の企画で、KinKi Kidsに充てて綴られたメッセージです。

その相反する複雑な美しさを忘れずに歌い継いでください。

松本さんが作詞した彼らのデビュー曲「硝子の少年」は、多面体が放つキラメキと痛みとで満ちています。

相反する人の心を、立体で受け取るウツワが、人を理解していくことなんだと思います。