ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ

今や海外のいたるところで店舗を広げる、ファーストフードの王様「マクドナルド」。
画期的なシステムを編み出したマクドナルド兄弟と、兄弟のアイデアをフランチャイズというカタチで広め、全世界にハンバーガー帝国を築いたレイ・クロックの物語が描かれています。

Based on a true story - 映画の冒頭ではこのテロップが流れました。
本作品を観たあとで、レイ・クロック自身が書いた著書「成功はゴミ箱のなかに」も読んだのですが。自著とマクドナルド兄弟の視点も入った映画とでは 言い分が異なる箇所はありました。

本コラムは、あくまでも映画で描かれたマクドナルド誕生秘話を基に、話を進めていきます。

しがないセールスマンだったレイ・クロックが、カリフォルニア州サンバーナーディノで繁盛するハンバーガーショップから、大量の受注を受けます。

一体、どんなお店なのか?
わざわざ足を運んだクロックは、ハンバーガーショップのオーナーであるマクドナルド兄弟が編み出した調理システムに心底、感銘を受けたのです。

マクドナルド兄弟を説得し、フランチャイズ契約を交わし、マクドナルドの店舗をどんどん増やしていくのですが。

ハンバーガーの質にはこだわり、必要以上の拡大を拒むマクドナルド兄弟と、アメリカ全土に店舗を広げ、利益を拡大したいと目論むレイ・クロック。

両者の思惑は一致せず、亀裂はどんどん広がるばかりです。
最後にクロックは、マクドナルド兄弟に多額の小切手を渡すことで、マクドナルドの経営権を手中に収めました。

収納テーブルや紙コップのセールスを始め、職を転々としたクロック。
マクドナルドに出会った頃、52歳でハンドミキサーを売り歩くセールスマンでした。
自宅では自己啓発レコード「ポジティブの力」を流し、成功に向けて、自分を鼓舞し続けていたのです。

さて、マクドナルド兄弟とフランチャイズ契約を交わしたクロックは、順調に店舗を広げます。
しかし資金調達は綱渡りで、奥さんに黙って自宅を抵当に入れてまで、資金を調達したのです。

全米の地図を広げ、出店に適した土地をくまなく探し、自ら出向いてオーナーに適した人材を発掘し続けるクロック。
やがて彼の飽くなき野心は、全米だけでなく全世界に突き進みました。

品質を大切にするがゆえに、自分たちが手の届く範囲でのビジネスを求めるマクドナルド兄弟。
破竹の勢いで進むクロックを止められず、兄弟はついにマクドナルドを手放さざるえませんでした。

弟はクロックに問うたのです。
「私の何が悪かったんだ」
クロックは、こう答えました。
「そこにいて動かないことが悪かったんだ」

映画だけみると、実直なマクドナルド兄弟は、ビジネスをレイ・クロックに乗っ取られたと捉えがちです。
もしくは現状に甘んじて、挑戦をしなかった敗者とも。
マクドナルド兄弟は、クロックのようにビジネスを拡大させる才覚は無かったのかもしれません。
しかしクロックだけが成功者で、マクドナルド兄弟は違うのでしょうか。

ファーストフードという名前もない時代。
マクドナルドの仕組みがいかに斬新だったのかを、次のように描かれてました。

クロックがレジで注文します。30秒後には注文した品物を手渡されました。
今ではよくある、ファーストフードの風景ですが。
30秒!?何をバカなこと言ってるんだ! クロックは目を吊り上げ、食って掛かったのでした。

当時、注文した料理が手元に届くまで、数十分かかるのはザラでした。
そういうものだ、それが当たり前だと見做すと、そこに疑問の目を向けること自体が難しいのですが。

マクドナルド兄弟は、当時の常識に挑んだのです。
世界に名だたるマクドナルドのシステムを生み出したのは、マクドナルド兄弟であり、自動車工場の仕組みを厨房に取り入れた「発想力」でした。

クロックはマクドナルド兄弟からマクドナルドを買い取るため、当時の基準でいえば莫大な金額である270万ドルを支払いました。
マクドナルド兄弟は終始、苦虫を噛み潰した顔でしたが。
しかし、豊かな発想は莫大な富を彼らにもたらしたのも事実です。

それだけではありません。
70年以上経った現在も、彼らが創り上げたシステムは世界中で稼働していているのです。

「ビジネスで成功するのに、『才能』や『学歴』、『金』は必要ない。必要なのは『根気』だ。」

クロックの言葉です。
人一倍、現場を動き回る行動力と粘り強い根気があったクロックだからこそ成功し、マクドナルドを全世界に広めることができたのでしょう。

しかし、その土台となるのは、マクドナルド兄弟が生み出したものです
彼らが生み出さなければ、マクドナルドはこの世に存在すらしません。
それは、レイ・クロックが必要ないといった、マクドナルド兄弟の「発想力」という「才能」がもたらしたものです。

ご本人達が納得したかどうかは別として、彼らも十二分に成功者でではないでしょうか。

ファウンダー という映画のタイトルには、「どちらが創業者なのか?」という意味も込められているそうですが。

生みの親 育ての親。

今までにない「発想力」を、遠くに広げ続ける「行動力」と「根気」が合わさって、遠く離れた日本に住む私は、今日もチーズバーガーを頬張ることができるのです。