聞こえづらさの苦悩

先日、タクシーに乗ったときのことです。

その時のタクシー運転手は気さくな方で、色々と話しかけてくれます。
タクシー業界の裏話なども、ざっくばらんに聞かせてくれました。

しかし、タクシーを降りた途端、ドーッと疲れが出ました。

まことに残念なことに・・・運転手さん、声が聞きづらい!!
くぐもった低音で、もともと通りづらい声なんだと思います。

コロナ対策により着用するマスクが発声の響きを遮断し、さらに運転席と客席を隔てる感染防止用シートが、聞き取りにくさに拍車をかけます。

時折、道についての確認も求められるので、適当に相槌をうって済ませる訳にはいきません。

全部は聞き取れないものの、ポツポツ拾った音をつなぎ合わせて、話す内容を組み立てていきます。それでも聞き取れない話は、愛想笑いでごまかしながら。
まさに耳に全集中した時間でした。

聞こえづらい音を拾うのは、こんなにもエネルギーを消耗させるのか・・・

私の母は数年前から加齢による難聴で、現在は補聴器を着用しています。補聴器さえ着ければマルッと解決では、と期待していたのですが・・・。
着用前よりは聞こえるものの、依然として聞き取れない音も多いと母はぼやいています。

耳が遠い母と話すのは、これまた骨折りです。

少し大きめの声で話しても、「えっ」と聞き返され・・・。
言い直し、聞き返されるの繰り返しで、私の音量はどんどん大きくなるばかり。

しかも声の大きさに反比例して、話す内容はどんどん簡素化していきます。
それでも、私の声が届く率は決して高くありません。
会話をしていても、どうも噛み合わないことが多いですから。

しかし、音が聞こえづらい母も、しんどい思いを抱えているのですね。
相手に失礼があったらと全身をそば立てて聞いても、ところどころしか耳に入ってこない。

聞き返すのも失礼かと、適当に相槌を打ってしまう。しかし時々、質問が混ざっていたりして、相槌ではごまかせないこともあり・・で。

もともと社交的だった母ですが、聞こえづらくなってからは、人と話すのがしんどいと嘆いてましたが。

もし、私がタクシー乗車の際に体験した聞こえづらさのような状態なら、人との会話が億劫になるのは無理はないでしょう。

ただ、それで引きこもりになり、人との交流が減るのは心身や脳にも影響を及ぼします。
さりとて無理強いはしづらいですし、難しいところですね。