まっとうに怒ることが人生を変えていく
いやぁ、ココロに強烈なパンチを喰らいました。
主役の安藤サクラさんが日本アカデミー賞最優秀女優賞を受賞した作品「百円の恋」。
主人公は、家業を手伝うことなく実家に引きこもるニート女性、一子です。
だらしなくブヨブヨした身体をひきずって歩く姿は、まさに「The・自堕落」。
出戻りの妹とソリが合わずひとり暮らしを始め、百円ショップの深夜勤務でバイトするようになったのですが。
そこで出会う人達も、曲者ぞろい。
店員や店長をはじめ、食品の廃棄物をもらいにくるおばちゃん、やがて一子が恋をするボクサーと、揃いに揃ってコミュ障のオンパレードでした。
前半は彼女の人生のように中だるみでしたが、ボクサーに捨てられた一子が、悔しさをバネに彼と同じボクシングジムに通い始める頃から俄然、躍動感が出てきたのです。
映画のラスト。一子が出場した女子ボクシングの試合にて。
寸暇を惜しんで練習したにも関わらず、対戦相手には全く歯が立ちません。
ボコボコに殴られながらも、闘志はいっこうに衰えず。
コノヤロー コノヤローっ コノヤローーーーーーっ
生命の鼓動のように、ガンガンガンガン叩きつけます。
観てる方も、逃げ場を失いました。
自分の不甲斐なさ、どうしようもなさを感じることは、誰にとっても痛いです。
ボクシングの試合中、過去の情けない思い出が走馬灯のように表れましたが。
今までは、「まぁ、自分だったら仕方がないよね」となだめてきたことでしょう。
しかし、リングに立つ一子は違います。
自分をまっすぐに見据えて、怒りを露わにしたのです。
過去の自分にケンカを売り ぶん殴っていく
主題歌のサビが「いたい いたい いたい」とまさにそのまんまなのですが。
避けてきた痛みを今、引きうけて、人生に立ち向かっていく一子の姿は美しくもありました。
結果を残せなかったオリンピック選手が、自分のふがいなさに唇をかみしめる姿を観ることがあります。
全て自分で受け止めた上で、悔しさを次の原動力へと引き継いでいくのでしょう。
そう。生きていく上で、時には自分にまっとうに怒ることも必要ではないでしょうか。
他人や状況に転嫁したり、または「自分ってこんなものか」と諦める・・・もしくは「いい経験になったよね~。」と、ポシティブでねじ伏せるなど。
安易なごまかしに手を出す前に、です。
自分に対して、メラメラ燃える怒りに震えながら
自己嫌悪やふがいなさに目を逸らさず
言い訳もせず
一心に引き受けなければ前に進めないときが、人生にはあります。
やがて焼け跡から立ち上がった自分が、再生へと踏み出していくのでしょう。