オデッセイ

主演のマット・デイモンが演じるのは、マーク・ワトニーという宇宙飛行士です。
余談ですが、マット・デイモンは「インターステラー」に続いての「惑星おいてきぼり」を演じてましたね。偶然でしょうか??

火星にひとり取り残されたオトコという前情報から、孤独にもだえながら、絶望に打ち勝ってゆく姿を描くのかと思っていたのですが・・・。

全くちがいました。
安心してください! とにかく明るいワトニーです。

当面の食材となる「じゃがいも」を精力的に作ったり、懐かしい洋楽をガンガンかけながら、火星をドライブしたり。

レッツ! ポシティブを絵に描いたごとくのサバイバルぶりでした。
ストーリー的には飽きさせるところはなく、最後まで楽しめましたが。
一方で、腑に落ちない感満載でした。

火星にたった一人、救助されるかどうかも分からない状況下において、常に生き延びることに前向きでいられるものでしょうか??

苦悩と絶望に飲み込まれそうになりながらも、どうにか乗り越えて、前を向く決意をするのなら分かるのですが。
リアリティに欠けるよなぁ・・・それが観た直後の感想でした。

しかし、です。
その観方こそ、リアリティが無いのでは? と自分で気づきました。

ともに火星を探索していた仲間たちが去った当初、地球との通信も閉ざされてしまい、ワトニーも死んだものとされていました。
次に火星探索で人間がやってくるのは4年後の予定で、食料は到底もちません。このままだと死を待つのみです。

普通に日本で暮らす私たちはどんな苛酷な状況であれ、絶望するか希望を抱くか、どちらかを選ぶことは可能です。

また絶望を感じても、すぐに死ねる訳ではありません。
放っておいても何だかんだと生きてはいけるので、死ぬにも意思が必要です。

しかし、ワトニーは違います。もうダメだ・・・と絶望に身を沈めた途端、すぐそこに死が待ち受けているのです。

それだけではありません。火星にひとりぼっち。希望を持とうとしたところで、気持ちを立て直すだけではどうにもなりません。

希望すら、自ら作り出さないといけないのです。

だからワトニーは食材となるじゃがいもをつくり、地球での通信を復活させ、どうすれば救助しやすくなるかを考え、行動に移しつづけました。
文字通りの孤軍奮闘のすえ、ゼロから一つずつ希望の芽を育てていったのです。

希望と絶望があること。選べること。
極限状況と比べるのもなんですが、絶望にひたれるのは、ある意味余裕があるからではないでしょうか。

ワトニーには、絶望という選択肢さえも与えられなかったのです。

極限とまでいかなくても、一寸先は絶望という危機は、私たちの人生の中でも一度や二度はあるかもしれません。そんなときに負の感情に浸ってしまうと、命取りになりかねません。

無理にでも笑っているうちに、楽しくなってくる。
そんな人間の特性を活かしながら、とにかく目の前の課題に取り組むしかないのでしょう。

日に日にやせ細るワトニーの背中が、前向きに生きるしかない苛酷さを教えてくれました。