俺は無関心なあなたを傷つけたい

 

「見て見ぬふりをする すべての日本人へ」
書籍の帯には、ケンカ腰のメッセージが飛び込みます。

俺は無関心なあなたを傷つけたい

TVをほぼ見ず、お笑い芸人に疎い私は、ウーマンラッシュアワーの村本さんという方の名前は聞いたことがある程度でした。社会問題を発言しては炎上を繰り返すというのも、ネットかどこかで耳にした程度です。

タイトルどおり、ヒリヒリした本でした。

朝鮮学校無償化、沖縄の基地移転、自然災害の復興支援など・・・
痛みがある現場に村本さんは足を運び、彼らの本音を聞こうとします。

それは、世間一般の人が期待する言葉ではなかったり、支援してくれている人には言いにくい言葉だったりしますが・・・。

村本さんは真正面から受け止め、それを笑いに変えようとするのです。

当事者以外からすると、「そんなこと言うのは失礼だ!」と眉をひそめることかもしれません。
しかし、当事者の受け止め方は違っていて、「そうそう!」「あるある!」と笑えることだったりします。

辛い状況のなかから、ツッコミどころをみつけ、クスッとした笑いに変える。
真っ暗闇に押し潰されそうな気持ちのなかで、ポッと灯りがともった経験は、私にもあります。

アメリカでは、スタンドアップコメディといって、マイク一本で自分の好き放題を話せる場があるそうです。そこで政治的、もしくは人種差別の話題を、お笑いのネタにして、観客の笑いを取るそうですが・・・。

芸能人が政治のネタを話すだけでも物議を醸す日本では、まだまだ受け止められるスタイルではないでしょう。でも、村本さんが好き放題ぶちまける独演会を聞いてみたい気になりました。

さて、この本の途中で、キング牧師のことばが目に留まりました。

「最大の悲劇は、悪人の圧政や残酷さではなく、善人の沈黙である」

読み進むごとに、著者である村本さんと対話しながら、私も自分の欺瞞や偽善を指摘されていきます。
傷つけられるけど、ページをめくる手が止まらない・・・。

不思議な書籍でした。
ヒリつくほど痛かったけれど、救われた気もしました。